「焼き魚に大根おろしって、決まってるよな」
「そういうものでしょう」
さちこさんが、当たり前のように答えました。
「誰が決めたんだろうな」
焼き魚に大根おろし。とろろ蕎麦。天ぷらに大根おろし。
こうした組み合わせは、昔から続いてきました。 理由を説明できる方は多くありませんが、 消化酵素という観点で見ると、筋が通っています。
この記事では、消化酵素を含む食べ物と、 昔からの食べ合わせについてまとめます。
- 大根に含まれる消化酵素
- 山芋・かぶ・キャベツの特徴
- 果物に含まれる消化酵素
- 昔からの食べ合わせの意味
- 組み合わせを考えるときの目安
大根に含まれる消化酵素
大根には、複数の消化酵素が含まれています。
| 酵素 | 分解するもの |
|---|---|
| アミラーゼ(ジアスターゼ) | でんぷん |
| プロテアーゼ | タンパク質 |
| リパーゼ | 脂質 |
3つの栄養素すべてに対応する酵素が入っているのが、 大根の特徴です。 すい臓から出るすい液と同じ顔ぶれです。
すりおろすと、はたらきが始まる
大根の酵素は、細胞の中にあります。
すりおろして細胞が壊れると、酵素が出てきてはたらき始めます。 だから、すりおろした状態で食べるのが理にかなっています。
ただし、大根おろしの酵素は時間が経つと落ちます。 辛味成分と同じで、空気に触れると変化していきます。 食べる直前におろすのが、いちばん確実です。
大根おろしの辛味と、部位の違い
大根は、部位によって辛味が違います。
先端に近いほど辛く、葉に近いほど甘い。 これは辛味成分の量の差です。
酵素についても、部位で差があるとされていますが、 はっきりした数値は定まっていません。 食べやすい部位を選んで構いません。
山芋・かぶ・キャベツ
大根以外にも、消化酵素を含む野菜があります。
| 野菜 | 主な酵素 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大根 | アミラーゼ・プロテアーゼ・リパーゼ | 3種類すべて含む |
| 山芋 | アミラーゼ | 粘りの成分も特徴 |
| かぶ | アミラーゼ | 大根に近い性質 |
| キャベツ | ー | ビタミンUを含む(酵素ではない) |
山芋のとろろ
とろろ蕎麦、麦とろご飯。
山芋にもアミラーゼが含まれています。 でんぷんの多いものと合わせるのは、 理屈の上では合理的な組み合わせです。
ただし山芋は、人によっては 口のまわりがかゆくなることがあります。 シュウ酸カルシウムという成分によるもので、 酵素とは関係ありません。
キャベツについて
とんかつにキャベツ。これも定番の組み合わせです。
ただし、キャベツに目立った消化酵素はありません。 「ビタミンU(キャベジン)」という成分が知られていますが、 これは酵素ではなく、アミノ酸の一種です。
食物繊維が多く、揚げ物と一緒に食べやすい。 そういう組み合わせだと考えるほうが正確でしょう。
果物に含まれる消化酵素
果物では、タンパク質を分解する酵素がよく知られています。
| 果物 | 酵素の名前 | 分解するもの |
|---|---|---|
| パイナップル | ブロメライン | タンパク質 |
| キウイ | アクチニジン | タンパク質 |
| パパイヤ | パパイン | タンパク質 |
| いちじく | フィシン | タンパク質 |
| バナナ | アミラーゼ | でんぷん |
肉料理のあとに果物を食べる習慣は、 世界のいろいろな地域にあります。
昔からの食べ合わせ
ここまで見てきた食材は、どれも古くから 特定の料理に添えられてきました。
大根のリパーゼが、魚の脂に対応します。
揚げ物の脂と、大根の組み合わせです。
蕎麦のでんぷんと、山芋のアミラーゼ。
からみ餅。でんぷんとアミラーゼの組み合わせです。
タンパク質とプロテアーゼ。
これらは、酵素の知識がない時代から続いてきた組み合わせです。
理屈は後から説明されたもので、
先人は「食べやすい」「さっぱりする」という感覚で
選んできたのだと考えられます。
ただし、過大に考えないこと
こうした話は面白いのですが、注意も必要です。
食べた酵素の多くは、胃で分解されます。 大根おろしを添えたから消化がすべて解決する、 というような単純な話ではありません。
薬味としての大根おろしは、量にすれば大さじ1〜2程度です。 体の中で作られる消化酵素の量とは、桁が違います。 「昔からの知恵として理にかなっている」くらいの受け止め方が、 ちょうどよいと思います。
組み合わせを考えるときの目安
最後に、実際の食事に落とし込みます。
さっぱりして食べやすくなります。
とろろ、からみ餅などの形で。
デザートとして自然に取り入れられます。
大根の酵素は時間が経つと落ちます。
薬味として添える程度で十分です。
大事なのは、続けられる形であることです。 「酵素のために」と身構えるより、 昔からの食べ合わせを思い出すほうが実践しやすいでしょう。
発酵食品という選択肢
生の野菜や果物の話をしてきましたが、 発酵食品にも酵素が関わっています。
味噌、醤油、ぬか漬け、納豆、甘酒。 これらは、微生物の酵素が原料を分解してできたものです。
| 食品 | 微生物 | 何が起きたか |
|---|---|---|
| 味噌 | 麹菌 | 大豆のタンパク質がアミノ酸に |
| 醤油 | 麹菌 | 同上。液体として仕上げたもの |
| ぬか漬け | 乳酸菌 | 野菜の成分が変化し、酸味が出る |
| 納豆 | 納豆菌 | 大豆が分解され、粘りが出る |
| 甘酒 | 麹菌 | 米のでんぷんが糖に |
高齢の方に向いている点
発酵食品には、そのまま食べられるという利点があります。
調理の手間が少なく、量も少しで済みます。 味噌汁1杯、漬物を数切れ、納豆1パック。 どれも、食が細くなってきた方でも取り入れやすい形です。
また、発酵の過程で原料がすでに分解されているという点も特徴です。 大豆のタンパク質は、味噌の中ではアミノ酸に近い形になっています。 噛む力や消化の状態に関わらず、取り入れやすい形だと言えます。
毎日続けるという観点
発酵食品の利点は、毎日の食事に組み込みやすいことです。
味噌汁は朝食の定番ですし、漬物は常備できます。 納豆は調理が要りません。 新しく何かを始めるより、 すでにある習慣を続けるほうが現実的でしょう。
具を変えれば飽きません。汁を少なめにすれば塩分も抑えられます。
数切れで十分です。食卓に出しておくだけで習慣になります。
1パックで、タンパク質も一緒に摂れます。
砂糖不使用のものを選べば、米の甘みだけです。
塩分には注意
ただし、味噌・醤油・漬物は塩分を含みます。
血圧について医師から指導を受けている場合は、 量について相談してください。 減塩タイプの製品を選ぶ、汁を残すといった方法もあります。
まとめ
-
1
大根には、3種類すべての消化酵素が含まれています。
-
2
大根の酵素はすりおろして細胞が壊れるとはたらき始めます。
-
3
食べる直前におろすのが、いちばん確実です。
-
4
果物では、タンパク質を分解する酵素が代表的です。
-
5
昔からの食べ合わせは、酵素の観点でも筋が通っています。
-
6
ただし、食べた酵素の多くは胃で分解されます。過大に考えないこと。
まさはるさんが湯呑みを置きました。
「たぶん、食べてみて良かったから続いたんだろうな」
さちこさんが、片づけの手を止めずに答えます。
「そういうものよ、たいていのことは」
大根、山芋、かぶ、パイナップル、キウイ、パパイヤなどです。 いずれも加熱していない状態で含まれます。 大根は3種類すべての消化酵素を含むのが特徴です。
食べる直前が最も確実です。 時間が経つと、辛味とともに酵素のはたらきも落ちていきます。 作り置きする場合は、冷蔵庫に入れて当日中に使い切ってください。
脂の多い料理には大根おろし、でんぷんの多い料理には山芋、 肉料理のあとには果物。 昔からの食べ合わせが、そのまま目安になります。
目立った消化酵素は含まれていません。 「ビタミンU(キャベジン)」はアミノ酸の一種で、酵素ではありません。 食物繊維が多く、揚げ物と合わせやすい食材です。
そう単純ではありません。 薬味としての量は少なく、体内で作られる消化酵素とは桁が違います。 食べやすさやさっぱり感という観点で取り入れるのが現実的です。 体調に不安がある場合は、かかりつけの医師にご相談ください。
食品添加物は使用していません。1日あたり約189円。
※この記事は、酵素という物質についての一般的な情報をまとめたものです。
特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※登場人物は物語上の設定です。
※健康食品は医薬品ではありません。
体調に不安のある方は、かかりつけの医師にご相談ください。
監修:菊地睦(げんき生活株式会社 代表取締役)


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