「酵素ドリンクって書いてあるが、これは何が入ってるんだ」
「体にいいものじゃないの」
さちこさんが台所から答えます。
「そりゃそうだろうが、中身の話だ」
酵素ドリンクという言葉は、広告でよく見かけます。 けれど何がどう作られているのかを説明したものは、 意外と多くありません。
この記事では、酵素ドリンクの作られ方と、 「酵素」という名前について、わかっていることをまとめます。
- 酵素ドリンクとは、どういう飲み物か
- どうやって作られるのか
- 原材料に何が使われているか
- 「酵素」という名前について
- 果汁飲料との違い
酵素ドリンクとは、どういう飲み物か
酵素ドリンクには、法律上の明確な定義がありません。
食品表示のうえでは「清涼飲料水」に分類されるものが多く、 「酵素ドリンク」という区分があるわけではないのです。
一般には、==野草・野菜・果実などを砂糖とともに漬け込み、 長期間発酵・熟成させた飲料==を指すことが多いようです。
まず押さえておきたいのは、 酵素ドリンクは、商品の名前としての呼び方だということです。 医薬品でも、機能性表示食品でもありません。 一般的な食品として販売されています。
どうやって作られるのか
作り方は製品によって違いますが、 おおまかな流れは共通しています。
野草、野菜、果実など。多いもので80種類以上。
原料と砂糖を重ねて仕込みます。砂糖は水分を引き出す役割もあります。
原料や空気中の微生物がはたらき、成分が分解されていきます。
数か月から数年。時間をかけて味と成分が変化します。
固形分を取り除き、容器に詰めます。
発酵で、何が起きているか
発酵とは、微生物が原料を分解する現象です。
酵母や乳酸菌が、原料に含まれる糖やタンパク質を分解します。 その過程で、アミノ酸、有機酸、ビタミンなどが生まれます。
味噌や醤油と、基本的には同じ仕組みです。 大豆のタンパク質が麹の酵素でアミノ酸に変わるのと、 起きていることは変わりません。
原材料に何が使われているか
製品によってかなり差があります。
| 分類 | 例 |
|---|---|
| 野草 | よもぎ、どくだみ、すぎな、くまざさ など |
| 野菜 | にんじん、大根、キャベツ、ごぼう など |
| 果実 | りんご、みかん、ぶどう、梅 など |
| 海藻 | 昆布、わかめ など |
| 糖類 | 砂糖、黒糖、オリゴ糖 など |
原材料表示は、使用量の多い順に記載する決まりです。 つまり、最初に書かれているものが最も多く入っています。
多くの製品で、砂糖類が上位に来ます。 発酵に必要な材料であり、 保存性を高める役割も果たしているためです。
発酵させる微生物の話
発酵を担っているのは、微生物です。 どんな微生物がはたらくかで、できるものが変わります。
| 微生物 | 何をするか | 身近な例 |
|---|---|---|
| 酵母 | 糖をアルコールと炭酸ガスに | パン、酒 |
| 乳酸菌 | 糖を乳酸に | ヨーグルト、漬物 |
| 麹菌 | でんぷんやタンパク質を分解 | 味噌、醤油、甘酒 |
| 酢酸菌 | アルコールを酢酸に | 酢 |
酵素ドリンクの場合、 原料についている微生物と、空気中の微生物が はたらくことが多くなります。
そのため、同じ原料・同じ手順でも、 仕込む場所や季節によって結果が変わります。
製品によって管理は違う
工場で作られる製品では、 特定の菌を加えて管理する場合もあります。
どちらが優れているという話ではなく、 再現性を重視するか、その土地のものを生かすかという 考え方の違いです。
「酵素」という名前について
ここが、この記事で最も大事なところです。
酵素ドリンクに、酵素はほとんど残っていません。
理由は2つあります。
理由1:発酵の過程で分解される
発酵とは、微生物が酵素を作って原料を分解する現象です。 そしてその酵素自身も、タンパク質でできています。
長期間の発酵・熟成の過程で、 酵素どうしが分解し合い、アミノ酸に変わっていきます。
分解を終えた酵素は、役目を終えて分解されます。
理由2:飲んでも消化される
仮に酵素が残っていたとしても、 飲めば胃に入ります。
胃液は強い酸性で、ペプシンという タンパク質分解酵素がはたらいています。 飲んだ酵素も、そこで分解されます。
「生きた酵素が腸まで届く」という説明を 見かけることがありますが、 胃酸を通過してはたらきを保つのは、簡単なことではありません。 少なくとも、一般的な飲料でそれが起きていると 示す十分な根拠はありません。
では、何が入っているのか
酵素が残っていないなら、中身は何なのか。
発酵と熟成を経てできるのは、 アミノ酸、有機酸、オリゴ糖、ビタミン、ミネラルなどです。
原料が分解されて、より小さな形になったもの。 味噌のうま味がアミノ酸であるのと、同じ理屈です。
| 成分 | 何から |
|---|---|
| アミノ酸 | タンパク質が分解されたもの |
| 有機酸 | 糖が分解されたもの(乳酸、酢酸など) |
| オリゴ糖 | 糖が部分的に分解されたもの |
| ビタミン | 微生物が作り出すもの |
**「酵素が入っている飲み物」ではなく、 「酵素によって作られた飲み物」**と考えるほうが、実際に近いでしょう。
発酵と、発酵させないものの違い
酵素ドリンクと似た飲み物に、 果実シロップがあります。梅シロップなどです。
作り方はよく似ていますが、目的が正反対です。
| 酵素ドリンク | 果実シロップ | |
|---|---|---|
| 目的 | 発酵させる | 発酵を抑える |
| 砂糖の量 | 原料の1.1倍程度 | 原料と同量前後 |
| 温度 | 常温 | 冷暗所、または冷蔵 |
| 泡 | 出る(発酵のしるし) | 出たら失敗とされる |
| 期間 | 数か月〜数年 | 2〜3週間 |
梅シロップで泡が出たら「発酵してしまった」と言われます。 酵素ドリンクでは、その泡こそが目的です。
同じ現象が、目的によって成功にも失敗にもなるわけです。
昔から各地に伝わる発酵食品は、 その土地の微生物と、その土地の気候によって できあがってきました。 同じ手順でも、場所が違えばできるものが変わります。 工業製品と違い、そこが面白いところでもあり、 管理が難しいところでもあります。
果汁飲料との違い
では、果汁ジュースと何が違うのでしょうか。
| 酵素ドリンク | 果汁飲料 | |
|---|---|---|
| 作り方 | 発酵・熟成させる | 搾る・濃縮する |
| 期間 | 数か月〜数年 | 短期間 |
| 原料 | 野草・野菜・果実など多種類 | 果実が中心 |
| 成分 | 分解された形(アミノ酸など) | 元の果実の成分 |
| 糖分 | 砂糖類を使う | 果糖が中心 |
大きな違いは、発酵という工程を経ているかどうかです。
原料の成分が、微生物によって 別の形に変わっているのが酵素ドリンクです。
糖分については知っておきたい
原材料の上位に砂糖類が来る製品が多いことは、 先に触れました。
酵素ドリンクは、糖分を含む飲料です。 血糖について医師から指導を受けている方は、 量やタイミングについて相談してください。
まとめ
-
1
酵素ドリンクに、法律上の定義はありません。一般には清涼飲料水です。
-
2
野草・野菜・果実を砂糖とともに長期間発酵・熟成させた飲料を指します。
-
3
酵素はほとんど残っていません。発酵の過程で分解されるためです。
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4
中身は、アミノ酸・有機酸・オリゴ糖など、分解されてできた成分です。
-
5
「酵素が入った飲み物」ではなく、「酵素が作った飲み物」と考えるほうが正確です。
-
6
糖分を含みます。血糖について指導を受けている方は医師にご相談ください。
まさはるさんが確かめるように言いました。
「なんだか、名前で損してるわねえ」
さちこさんが笑います。
「味噌と同じだって言われたほうが、分かりやすいな」
ほとんど残っていません。 発酵・熟成の過程で、酵素自身も分解されるためです。 また、仮に残っていても、飲めば胃酸とペプシンで分解されます。 中身は、分解されてできたアミノ酸や有機酸などです。
法律上の定義はなく、一般には**野草・野菜・果実を砂糖とともに 長期間発酵・熟成させた飲料**を指します。 食品表示のうえでは清涼飲料水に分類されるものが多くあります。
発酵という工程を経ているかどうかです。 酵素ドリンクは原料の成分が微生物によって分解され、 アミノ酸や有機酸といった別の形になっています。
法的な定義のある用語ではありません。 胃酸を通過してはたらきを保つことは簡単ではなく、 一般的な飲料でそれが起きていると示す十分な根拠はありません。 表示の言葉としてご覧ください。
製品によって異なります。原材料表示は使用量の多い順なので、 砂糖類がどの位置に書かれているかを確認してください。 血糖について指導を受けている方は、医師にご相談ください。
食品添加物は使用していません。1日あたり約189円。
※この記事は、酵素という物質についての一般的な情報をまとめたものです。
特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※登場人物は物語上の設定です。
※健康食品は医薬品ではありません。
体調に不安のある方は、かかりつけの医師にご相談ください。
監修:菊地睦(げんき生活株式会社 代表取締役)


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