さちこさんが、買い物から帰って言いました。
「自分でも作れるもんなのかね」
まさはるさんが顔を上げます。
「瓶に入れて、毎日かき混ぜるんですって」
酵素ドリンクは、家庭で作ることもできます。 梅、りんご、季節の野草。地域によっては 昔から続いている作り方もあります。
ただし、発酵と腐敗は紙一重です。 この記事では、作り方とあわせて、 気をつけたいことをまとめます。
- 手作り酵素ドリンクの基本的な作り方
- 発酵と腐敗の見分け方
- 衛生面で気をつけること
- 市販品との違い
手作り酵素ドリンクとは
果物や野草を砂糖に漬け、 原料や空気中の微生物によって発酵させたものです。
梅シロップと作り方は似ていますが、 梅シロップは発酵を抑えるのに対し、 酵素ドリンクは発酵させるという違いがあります。
基本的な作り方
材料と手順は、おおむね次のようになります。
| 材料 | 分量の目安 |
|---|---|
| 果物・野草 | 1kg |
| 砂糖(白砂糖) | 1.1kg(原料の1.1倍) |
砂糖が原料より多いのが特徴です。 浸透圧で水分を引き出し、 雑菌が繁殖しにくい環境を作るためです。
広口の瓶を熱湯またはアルコールで消毒し、完全に乾かします。
よく洗い、水気を拭き取ってから食べやすい大きさに切ります。
原料と砂糖を交互に重ね、最後は砂糖で覆います。
直射日光を避けた場所に。冷暗所が向いています。
清潔な手か木べらで、1日1〜2回。全体を混ぜます。
発酵が始まっています。1〜2週間が目安です。
ざるや布で固形分を取り除き、別の容器に移します。
冷蔵庫で保存し、1〜2か月を目安に使い切ります。
毎日かき混ぜることが、いちばん大事な工程です。 表面に空気が触れたままだとカビが生えやすく、 かき混ぜることで全体が均一に保たれます。 旅行などで数日空ける予定がある場合は、 仕込む時期をずらしてください。
発酵と腐敗の見分け方
ここが最も重要な部分です。
発酵と腐敗は、どちらも微生物のはたらきによる変化です。 人にとって望ましい変化を発酵、 そうでない変化を腐敗と呼んでいるにすぎません。
| 発酵している | 腐敗している | |
|---|---|---|
| 香り | 甘酸っぱい、果実の香り | 鼻をつく異臭、アルコール臭が強すぎる |
| 泡 | 細かい泡が上がる | 泡が出ない、または異常に多い |
| 色 | 原料の色が残る | 黒ずむ、変色する |
| 表面 | きれい | 白や緑のカビ、膜 |
| 味 | 甘酸っぱい | 苦い、えぐい |
少しでも異常を感じたら、飲まないでください。
カビが生えた場合、表面を取り除いても
菌糸が内部に及んでいる可能性があります。
容器ごと処分するのが安全です。
仕込む量の考え方
初めて作る場合、少量から始めることをおすすめします。
| 用途 | 原料の量 | できあがり |
|---|---|---|
| まず試す | 500g | 500mlほど |
| 慣れてきたら | 1kg | 1リットルほど |
大量に仕込むと、失敗したときの損失が大きくなります。 また、毎日かき混ぜる手間も量に比例します。
容器の大きさ
原料と砂糖を入れて、容器の8分目までにしてください。
発酵でガスが出て、かさが増えることがあります。 いっぱいに詰めると、あふれる原因になります。
保存容器の選び方
使う容器によっても、作りやすさが変わります。
| 容器 | 向き不向き |
|---|---|
| ガラス瓶(広口) | 最も向く。消毒しやすく、中が見える |
| 陶器の甕 | 昔ながらの方法。重いが温度が安定する |
| プラスチック容器 | 熱湯消毒ができないものがある。におい移りも |
| 金属容器 | 向かない。酸で腐食することがある |
広口のガラス瓶が最も扱いやすいでしょう。 かき混ぜやすく、中の様子が見えるためです。
ふたは密閉しない
発酵が進むと、炭酸ガスが出ます。
密閉すると内圧が上がり、 ふたが飛んだり、容器が割れたりする危険があります。
ガーゼや布をかぶせて輪ゴムで留める、 またはふたを軽く乗せるだけにしてください。
密閉厳禁です。
発酵が活発な時期は、特に注意してください。
衛生面で気をつけること
家庭で作る以上、リスクはあります。 最低限、次の点を守ってください。
熱湯またはアルコール。水分が残っていると雑菌の原因になります。
洗ったあと、しっかり水気を取ります。
かき混ぜる前に、石けんで洗います。
減らすと腐敗しやすくなります。分量は守ってください。
泡が出たら、頃合いを見てろ過します。
完成後は必ず冷蔵します。
作らないほうがよい場合
次のような場合は、市販品を選ぶことをおすすめします。
- 毎日かき混ぜる時間が取れない
- 夏場で室温が高い
- 体調に不安がある方が飲む
- 小さなお子さんや高齢の方が飲む
家庭での発酵食品づくりは、気温と湿度に左右されます。 同じ手順でも、季節によって結果が変わります。 初めて作る場合は、気温が安定している春か秋に、 少量から試すのが安全です。
季節ごとに作れるもの
手作りの楽しみのひとつは、 季節の材料で作れることです。
| 季節 | 材料の例 |
|---|---|
| 春 | よもぎ、ふきのとう、たけのこ、いちご |
| 夏 | 梅、しそ、びわ、すもも |
| 秋 | りんご、柿、ぶどう、栗 |
| 冬 | みかん、ゆず、大根、れんこん |
地域によって、昔から作られてきたものがあります。 梅、しそ、ゆず。台所に伝わる知恵として、 親から子へ伝わってきた形です。
初めて作るなら
初めての方には、りんごか梅が向いています。
水分が出やすく、扱いやすいためです。 また、変化が分かりやすいので、 発酵しているかどうかを判断しやすくなります。
野草は、種類の見分けがついてからにしてください。 似た姿の植物に、有毒なものがあります。 よもぎとトリカブトの若芽は、見分けがつきにくいことで知られています。 確実に分かるものだけを使ってください。
市販品との違い
手作りと市販品には、いくつか違いがあります。
| 手作り | 市販品 | |
|---|---|---|
| 発酵期間 | 1〜2週間 | 数か月〜数年 |
| 微生物 | 原料や空気中のもの | 管理された環境 |
| 衛生管理 | 自己責任 | 製造基準に基づく |
| 原料 | 数種類 | 数十種類のことも |
| 保存性 | 1〜2か月 | 未開封で長期 |
| 費用 | 材料費のみ | 製品価格 |
手作りの良さは、作る過程そのものにあります。 季節の果物を漬け、変化を毎日見る。 その体験は、市販品では得られません。
一方、安定した品質と衛生管理という点では、 市販品に利があります。どちらが優れているという話ではなく、 目的によって選ぶものだと考えてください。
まとめ
-
1
手作り酵素ドリンクは、原料1kgに対して砂糖1.1kgが基本です。
-
2
毎日かき混ぜることが、最も重要な工程です。
-
3
発酵と腐敗は紙一重。香り・泡・色・表面で見分けます。
-
4
少しでも異常を感じたら飲まないでください。容器ごと処分します。
-
5
容器の消毒、原料の水気取り、手洗い。衛生管理が前提です。
-
6
体調に不安のある方や高齢の方が飲む場合は、市販品を選ぶほうが安心です。
さちこさんが言いました。
「毎日かき混ぜるのを20年か」
まさはるさんが感心したように言います。
「それがいちばん難しいところだな」
原料の1.1倍が基本です。原料1kgなら砂糖1.1kg。 砂糖には浸透圧で水分を引き出し、 雑菌が繁殖しにくい環境を作る役割があります。 減らすと腐敗しやすくなるので、分量は守ってください。
表面にカビが生えやすくなります。 空気に触れた部分が乾き、雑菌が繁殖する足がかりになるためです。 1日1〜2回、清潔な手か木べらで全体を混ぜてください。
香り・泡・色・表面を見ます。 甘酸っぱい香りと細かい泡は発酵、 異臭・変色・カビは腐敗のしるしです。 判断に迷ったら、飲まないでください。
使わないでください。 表面のカビを取り除いても、 菌糸が内部に及んでいる可能性があります。 容器ごと処分することをおすすめします。
ろ過して冷蔵保存し、1〜2か月を目安に使い切ってください。 市販品と違い、長期保存には向きません。 少量ずつ作るほうが安全です。
食品添加物は使用していません。1日あたり約189円。
※この記事は、酵素という物質についての一般的な情報をまとめたものです。
特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※登場人物は物語上の設定です。
※健康食品は医薬品ではありません。
体調に不安のある方は、かかりつけの医師にご相談ください。
監修:菊地睦(げんき生活株式会社 代表取締役)


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