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酵素とは?体の中での働きをやさしく解説

食卓でお茶を淹れる高齢の女性の手元と、隣に置かれた新聞 酵素のきほん
「酵素って、よく聞くけどなあ」
テレビの健康番組を見ていたまさはるさん(81歳)が、そう言いました。 隣でお茶を淹れていたさちこさん(81歳)も、手を止めます。
「体にいいって言うけどね。説明しろって言われたら、できないわ」
— ある日の、食卓にて

酵素という言葉は、テレビでも広告でもよく見かけます。 けれど「酵素とは何か」を説明できる方は、そう多くありません。

この記事では、酵素という物質が何をしているのかを、 できるだけかみくだいて説明します。 健康食品の話ではなく、体のしくみの話です。

この記事でわかること
  • 酵素とは、そもそも何か
  • 体の中で、どんな働きをしているのか
  • 食べ物から摂る酵素と、体内で作られる酵素の違い
  • よく言われている話の、どこまでが本当か
白いご飯と焼き魚、大根おろしが並んだ朝の食卓

酵素とは、何をするものか

酵素とは、体の中で起きる化学反応を助けるタンパク質のことです。

これだけだと分かりにくいので、言い換えます。

私たちがごはんを食べると、体の中でそれが細かく分解されていきます。 ごはんのままでは体に取り込めないので、もっと小さな形にする必要があるからです。

この「分解する」作業をしているのが、酵素です。

酵素がしていること
1
ごはんを食べる

この時点では「でんぷん」という大きなかたまりです。 このままでは、体に取り込めません。

2
酵素がはたらく

だ液に含まれるアミラーゼが、でんぷんを細かく切り分けます。

3
ブドウ糖になる

ここまで小さくなって、はじめて体に吸収されます。

だ液に含まれるアミラーゼという酵素は、 でんぷんをブドウ糖に分解します。 ごはんをよく噛んでいると、だんだん甘く感じることがあります。 あれは、だ液のアミラーゼがでんぷんを分解しているからです。

🌱
なるほど

酵素は「はさみ」のようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。 大きなものを、使える大きさに切り分ける道具です。 そして、はさみ自身は減りません。 切り終わったあとも、また次のものを切ることができます。

酵素は、自分は変化しない

ここが酵素の面白いところです。

酵素は反応を助けますが、自分自身は変化しません。 一度はたらいたあとも、また次の分子に対してはたらくことができます。

このような物質を、化学の言葉で触媒(しょくばい)と呼びます。 酵素は、生き物の体の中ではたらく触媒です。

体の中にある酵素の種類

人の体の中には、数千種類の酵素があると言われています。 そのひとつひとつが、決まった相手にだけはたらきます。

大根をおろし金でおろしている高齢の女性の手元

これを基質特異性(きしつとくいせい)と呼びます。 難しい言葉ですが、意味は単純です。

🔑

でんぷんを分解する酵素は、でんぷんにしかはたらきません。
タンパク質には手を出しませんし、脂肪にも関わりません。 鍵と鍵穴のように、決まった相手だけに合う形をしています。

だから、種類がたくさん必要になります。 食べるものが多様である以上、それを分解する酵素も多様でなければなりません。

大きく分けると2つ

体の中の酵素は、はたらく場所によって大きく2つに分けられます。

1
消化酵素

口・胃・すい臓・小腸ではたらき、食べたものを分解します。 だ液のアミラーゼ、胃のペプシン、すい臓のリパーゼなどです。 消化酵素については、別の記事でくわしく説明しています。

2
代謝酵素

体の中のあらゆる場所ではたらき、 分解されたものを組み立て直したり、エネルギーを取り出したりします。 呼吸も、筋肉を動かすことも、酵素のはたらきの上に成り立っています。

消化酵素は、食べたものを「ばらばらにする」役。 代謝酵素は、ばらばらになったものを「使う」役です。

食べ物に含まれる酵素と、体内の酵素

ここで、よく混同される点を整理します。

酵素は、体の中で作られるだけではありません。 食べ物にも、もともと酵素が含まれています。

大根には、でんぷんを分解する酵素があります。 パイナップルには、タンパク質を分解する酵素があります。 どちらも、その植物が生きるために持っているものです。

身近な食材に含まれる酵素
食材 酵素の名前 分解するもの
大根 アミラーゼ でんぷん
パイナップル ブロメライン タンパク質
パパイヤ パパイン タンパク質
キウイ アクチニジン タンパク質

酢豚にパイナップルが入っているのは、 このブロメラインが肉をやわらかくするからだと言われています。 この仕組みについては、別の記事でくわしく説明しています。

よく言われていることの、どこまでが本当か

酵素については、さまざまなことが言われています。 そのうち、確かめておきたい点を3つ挙げます。

まな板の上に並んだ生のパイナップル、キウイ、パパイヤ

「食べた酵素が、そのまま体ではたらく」

これは、正確ではありません。

酵素はタンパク質です。そしてタンパク質は、胃や小腸で分解されます。 食べた酵素も、消化の過程でアミノ酸に分解されます。

つまり、口から入れた酵素が、 そのままの形で体内の酵素として使われるわけではありません。

🌱
なるほど

ただし、口の中や胃の上部では、食べ物の酵素がはたらく時間があります。 大根おろしを添えるとさっぱりするのは、 口の中で分解が始まっているからだと考えられています。 「体内に届く」のではなく「食べている間にはたらく」と考えるほうが、実際に近いようです。

「酵素は加熱すると壊れる」

これは、おおむね本当です。

酵素はタンパク質なので、熱を加えると形が変わります。 形が変わると、鍵と鍵穴が合わなくなり、はたらかなくなります。 これを失活(しっかつ)と呼びます。

多くの酵素は、おおよそ50〜60度を超えるとはたらきが弱まるとされています。 温度との関係は、別の記事でくわしく説明しています。

「歳をとると酵素が減る」

これについては、はっきりしたことは分かっていません。

加齢によって消化の機能が変化することは知られていますが、 「体内の酵素の総量が決まっていて、それが減っていく」という考え方には、 科学的な裏づけが十分ではありません。

広告などでこの説明を見かけることがありますが、 確立された事実として扱うのは避けたほうがよいと考えています。

酵素は、どうやって見つかったのか

少しだけ、歴史の話をします。

人は昔から、発酵という現象を利用してきました。 味噌、醤油、日本酒、パン。 どれも、何かが「変化する」ことを使った食べ物です。

ただし、なぜ変化するのかは分かっていませんでした。

「酵母がいなくても発酵した」

19世紀の終わり、ドイツの研究者が、 酵母をすりつぶした液でも発酵が起きることを確かめました。

生きている酵母がいなくても、発酵が進んだのです。 つまり、発酵を起こしているのは生き物そのものではなく、 生き物が作り出した何かの物質だということになります。

この物質に、酵素という名前がつきました。

🌱
なるほど

「酵素」という字は、発酵のもとになるものという意味です。 英語のエンザイム(enzyme)も、ギリシャ語で 「酵母の中にあるもの」という語からきています。 どちらの言葉も、発酵から名づけられました。

味噌も醤油も、酵素のはたらき

味噌を作るとき、大豆に麹を加えます。

麹菌が作り出す酵素が、大豆のタンパク質をアミノ酸に分解します。 このアミノ酸が、味噌のうま味のもとです。

塩麹に肉を漬けるとやわらかくなるのも、同じ理由です。 麹の酵素が、肉のタンパク質にはたらいています。

台所で昔から使われてきたものの多くが、 実は酵素のはたらきの上に成り立っていました。

まとめ:酵素をひとことで言うと

  • 1
    酵素は、体の中の化学反応を助けるタンパク質です。 自分は変化せず、何度もはたらきます。
  • 2
    決まった相手にしかはたらきません。 だから種類がたくさん必要になります。
  • 3
    食べ物にも酵素は含まれますが、 その多くは消化の過程で分解されます。
  • 4
    加熱するとはたらきが弱まります。 生で食べるかどうかは、調理の選択肢のひとつです。
夕食前の食卓で、湯呑みを手にした高齢の男性の後ろ姿
「つまり、体の中で、はたらいてくれる道具みたいなものか」
まさはるさんが言いました。さちこさんがうなずきます。
「大根おろしを添えるのも、昔の人はそういうことを知らずにやってたのねえ」
理屈は知らなくても、体は分かっていたのかもしれません。
— その日の、夕食の前に

よくある質問

Q. 酵素と酵母は、何が違うのですか

酵母は生き物(微生物)、酵素は物質です。 パンやお酒を作る酵母は、生きていて増えます。 酵素は生き物ではなく、酵母が作り出すはたらき手のひとつです。 名前が似ているので混同されやすいところです。

Q. 酵素は英語で何と言いますか

エンザイム(enzyme)です。 多くの酵素の名前が「〜アーゼ(-ase)」で終わるのは、 この命名のきまりによるものです。 アミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、いずれもそうです。

Q. 酵素の読み方を教えてください

「こうそ」と読みます。 「酵」は発酵の酵、「素」は要素の素です。 発酵に関わるもとになるもの、という意味合いから名づけられました。

Q. 酵素は、どこで作られるのですか

体の中のさまざまな場所で作られます。 消化酵素は、だ液腺・胃・すい臓・小腸などで作られます。 設計図は遺伝子にあり、必要に応じて体が作り出しています。

Q. 酵素ドリンクには、酵素が入っているのですか

発酵の過程で、原料に含まれていた酵素の多くは分解されます。 残るのは、発酵によって生まれたアミノ酸や有機酸、糖などです。 酵素ドリンクの中身については、別の記事で説明しています。

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※こちらは食品です。医薬品ではありません。

※この記事は、酵素という物質についての一般的な情報をまとめたものです。 特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※登場人物は物語上の設定です。
※健康食品は医薬品ではありません。 体調に不安のある方は、かかりつけの医師にご相談ください。
監修:菊地睦(げんき生活株式会社 代表取締役)

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